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かぎ

鍵

谷崎 潤一郎

「中央公論」中央公論社、1956(昭和31)年1月、5月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,182 字 · 200 页

青空文庫

それは私の持ち前の陰険性のゆえでもあるが、それよりも、自分の方が娘よりも優れているという自信を持っていたところから、その自尊心を自ら傷つけたくなかったからであった。なおもう一つ、私が敏子を嫉妬する理由のあること―――というのは、木村が彼女をも愛しているかも知れないという疑いのあること―――を、夫に知られるのを何よりも私は恐れた。夫自身も、「モシ僕ガ木村デアッタトシテ、ドッチニヨケイ惹キ付ケラレルカトイエバ、ソレハ、年ハ取ッテイルケレドモ母ノ方デアル※(コト、1-2-24)ハ確カ」であると云いながら、「ダガ木村ハドウトモ云エナイ」と云い、「サシアタリ母ノ歓心ヲ買イ、母ヲ通ジテ敏子ヲ動カソウトシテイル」かも知れないと、多少疑念を挟んでいた時もあった。で、私は夫にそういう疑念を抱かせることを最も嫌った。木村は一途に私一人を愛しているもの、私のためにはいかなる犠牲をも惜しまないでいるものと、夫に思わせておきたかった。そうでなければ、夫の木村に対する嫉妬が生一本で強烈なものにならないからであった。

六月十一日。………夫は二月二十七日に、「ヤッパリ推察通リダッタ。