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かがみじごく
鏡地獄
江戸川 乱歩
「大衆文芸」1926(大正15)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,074 字 · 27 页
できあがると、夜中にそれを実験室に運び、小電灯のコードには室内灯の線を連結して、それを主人に引き渡したまま帰宅したのだと申します。それ以上のことは、技師にはまるでわからないのでした。
私は技師を帰し、狂人は召使いたちに看護を頼んでおいて、その辺に散乱した不思議なガラス玉の破片を眺めながら、どうかして、この異様な出来事の謎を解こうと悶えました。長いあいだ、ガラス玉との睨めっこでした。が、やがて、ふと気づいたのは、彼は、彼の智力の及ぶ限りの鏡装置を試みつくし、楽しみつくして、最後に、このガラス玉を考案したのではあるまいか。そして、自からその中にはいって、そこに映るであろう不思議な影像を、眺めようと試みたのではあるまいかということでした。
が、彼が何故発狂しなければならなかったか。いや、それよりも、彼はガラス玉の内部で何を見たか。一体全体、何を見たのか。そこまで考えた私は、その刹那、脊髄の中心を、氷の棒で貫かれた感じで、その、世の常ならぬ恐怖のために、心の臓まで冷たくなるのを覚えました。彼はガラス玉の中にはいって、ギラギラした小電灯の光で、彼自身の影像をひと目見るなり、発狂したのか、それともまた、玉の中を逃げ出そうとして、誤まって扉の取手を折り、出るに出られず、狭い球体の中で死の苦しみをもがきながら、ついに発狂