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かね
鐘
小川 未明
「童話の社会」1930(昭和5)年9月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,745 字 · 6 页
K町は、昔から鉄工場のあるところとして、知られていました。町には、金持ちが、たくさん住んでいました。西の方を見ると、高い山が重なり合って、その頂を雲に没していました。そして、よほど、天気のいい日でもなければ、連なる山のすがたを見つくすことができなかったのであります。
その山おくにも、人間の生活が、いとなまれていました。ひとりの背の高い、かみのぼうぼうとした、目ばかり光る、色の黒い男が、夏のさかりに、大きな炭俵をおって、このけわしい山道を歩いて、町へ売りにきました。じぶんが木をきり、そしてたいて製造したものを、売りに出て、その金で、食べ物や、着る物を買って、ふたたび山へはいるにちがいありません。それは、いくらかせいでも、しれたものです。これだけで、人間が、一年じゅうの生活をすると考えると、ひとつの炭俵にも、命がけのしんけんなものがあるはずでありました。
ある夏のこと、男は、汗をたらして、重い炭だわらを二つずつおって、山をくだり、これを町のある素封家の倉へおさめました。この家は、けちんぼということで、町でもだれ知らぬはなかったのです。そのおさめ終わった日に、男は代金をせいきゅうしますと、おさめた俵数より、二俵少なく、これしかうけとらぬから、それだけの代金しかはらえないというのでした。