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かね

鐘

小川 未明

「童話の社会」1930(昭和5)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,745 字 · 6 页

青空文庫

と少年は、晩がた町から、見てきた年よりにむかって、たずねました。

「賃金が、やすいからだろうが、あんなことをさせるのは、むじひだ。」

年よりは、こうかんたんにこたえました。このじぶんから、いよいよ雨がふりだした。

鐘は、船にうつすさいに、すべって、板をころがると海のなかに落ちてしまったそうです。その話が夜になってから、町や村を、びっくりさせました。

落ちた鐘は、海が深く、下に岩が多いために、ありかをさぐったけれど、わからず、それきりになってしまったが、ふしぎなことは、とうざ、あらしの日に、海があれると、どこからともしれず、海のなかから鐘の音がきこえたことです。

しかし、それも月日がたつと、鐘の音も、うわさとともに、きえていきました。

ただ、たねだけは、いつか芽が生え、その芽はのびるものです。少年は、大きくなってから、この町の工場に働いて、正義と自由のために、たたかう身となりました。そしてつかれると、かれは、丘にあがった。すると、みすぼらしいふうをした山男が、いかりにおののいて、

「死んでも、忘れやしねえぞ!」とさけんだ、姿が目にみえて、かれをうちのめしました。