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かっか
閣下
佐々木 邦
「面白倶楽部」1925(大正14)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,494 字 · 16 页
と一将校が進み出て敬礼した時、閣下は一段高いところへ上って、並んでいた私達に夜警の必要を説き始めた。ナカナカの雄弁で、私は軍人も隅には置けないと思った。
引続いて夜警が毎晩の仕事になった。順番が三日目毎に廻って来た。夜の十二時が交代で、宵の口に廻っても暁方に廻っても、私は両隣りの大佐と共に閣下の相棒だった。皆が閣下と呼ぶし、閣下もそれに異存はないようだったから、私もこの老人を閣下々々と呼んだ。閣下はむずかしい顔をしているにも拘らず、ナカ/\面白い人だった。私は軍人社会のことは全く不案内だから、閣下といえば可なり威張るものと思っていたが、それは考え違いだった。却って私の会社の重役よりも腰が低い。
怪しいものも何にも来ないのに半夜見張番をしているのは退屈だったから、私達は世間話に時を移した。閣下もよく話した。息子さんを軍人にしなかったのが気になると見えて、
「何うも天分という奴は如何とも圧え切れませんな。到頭文学者になってしまいましたよ。我輩は在郷軍人の思想善導に骨を折っている。伜の奴は小説を書いて世道人心の悪化に努めている。御覧なさい。夜警にも出て来ません。