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かっか

閣下

佐々木 邦

「面白倶楽部」1925(大正14)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,494 字 · 16 页

青空文庫

と私は黙っていると睡くなるから談論を歓迎した。

「小林さん、あなたは召し上りませんな」

「いや、以前は盛んにやったものですが心臓に悪いと言われて到頭止めてしまいました」

「それは豪い。豪いです。煙草を止めるくらい意志の強い人なら何んな大事業でも出来ます。ねえ水谷君」

「はゝあ、御道理です。私なぞも悪いと承知で止められない組です」

と水谷歩兵大佐は謙遜した。もう一人の砲兵大佐は何も言わないと思ったら、居睡りをしていた。尤もこの人は煙草を喫まない。

「我輩のは真正に止めようと思えば止められないこともない積りだが、何うもいかん。若い時分部下の面前で宣誓して断然止めたんだが、間もなく感ずるところあって又始めたのさ」

と閣下は無条件で喫んでいるのではないという意味らしかった。

「閣下、感ずるところあって云々は甚だ潔くありませんな」

と水谷さんは自分独り意志薄弱と極められては満足出来なかった。

「感ずるところというよりは寧ろ発明するところあったのさ。当時連隊長が神経衰弱にかゝって長いことブラ/\していた。軍医の処方では何うも治らない。そこで東京の大学病院へ遙々診察を受けに行ったところが簡単なものさ。