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とうそう

闘争

小酒井 不木

「新青年」1929(昭和4)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,079 字 · 38 页

青空文庫

「それでは何故そんな虚偽の自白をしたのでしょう」

「それは、あとでわかるよ。未亡人をつれて来てくれたまえ」

間もなく黒い洋装の喪服を着た北沢未亡人が連れられて来た。眼の縁が際立って黒かったので、一層チャーミングに見えたが、さすがに、三十過ぎであることは皮膚のきめにうかゞわれた。

例によって福間警部が退くと、先生は、

「あなたは、御主人が自殺された日、何時に用たしから御帰りになりましたか」

「五時半頃だったと思います」

「そうではないでしょう。四時か四時半頃だったでしょう」

「いゝえ、たしかに五時……」

「本当のことを言って下さい。こちらには何もかもわかって居るのですから」

「……………………」

「あなたは、四時頃に帰って死骸を発見し、びっくりして緑川さんのところへかけつけ、それから緑川さんをよんで来て、二人でとくと相談して、はじめて警察へ御知らせになったでしょう」

「いえ……」

「だから、緑川さんは、あなたが御主人を殺しなさったにちがいないと思いこみ、あなたをかばうために、今日、自分が殺したのだといって白状されましたよ」

この言葉に彼女はぶるッと身をふるわせて、

「それは本当で御座いますか。