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とうそう

闘争

小酒井 不木

「新青年」1929(昭和4)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,079 字 · 38 页

青空文庫

それでは何もかも申し上げます。まったく仰せのとおりで御座います。緑川さんが殺したのでもなく、また私が殺したのでもありません。私が四時に帰ったとき、すでに良人は死んで居りました。そうして私は一時に家を出て、それまで緑川さんのところに居たので御座います」

「よろしい。あなたの今言われたことを真実と認めます」

こう言って、毛利先生は警部をよんで夫人を連れ去らせた。

「涌井君」と、先生はさすがに喜ばしそうに言われた。「真実を知ることは、案外に楽なときもあるね。僕は緑川の実演で、彼が死骸を見せられたにちがいないと推定したのだが、果してそうだった。それにしても、恋は恐ろしいものだ。夫人の罪を救おうとして虚偽の自白をなし、敢て自分を犠牲にしたのだ」

K君。僕は今更ながら先生の烱眼に驚かざるを得なかった。先生の前には、「虚偽」はつねに頭を下げざるを得ない。

「さあ」と先生は腕を組んで言われた。「これで、二人には罪がないとわかり、北沢は自殺ときまったが、さて、何だかまだ事件は片づいて居ないではないかね」

「はあ」と、返事をしたものの、僕にはさっぱり見当がつかなかった。

福間警部がはいってくると、先生は訊問の結果を告げ、二人を放免すべきことを主張せられて、そうして最後に、