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とうぎゅう

闘牛

国枝 史郎

「新趣味」1922(大正11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,976 字 · 20 页

青空文庫

の価値を、知っていない様に思われるが……」

「或はそうかも知れません。が、しかし私は耳飾の伝説と迷信とを知っています」

「伝説と迷信とを知ってるって?」

「いかにも左様でござります――その伝説に依りますと、その耳飾はずっと往昔、西班牙の国を支配していた亜剌比亜回教徒の酋長が、耳に附けていた耳飾で、その耳飾を持っている限りは、其人の血統は絶えないとか……」

「いかにも君の云う通りだ。その耳飾を持っている限りは其人の血統は絶えないのだ」

老人は厳かに云い返えしたが、

「だから今度の盗難は只の盗難ではないというのだ」

「要するに盗んだ耳飾を盗み返えされたという訳ですな――是も伝説に依りますと、その酋長を亡ぼしたさに、アルホンゾー陛下の御先祖の王が大盗賊団にお命じになり、耳飾を盗ませたとか申すことで……因果応報でございますな」ラシイヌは皮肉に微笑した。

「それでは君は今度の賊を回教徒であると云うのかな?」

「回教徒以外にも、皇室を、怨んで居るものもございましょう」

「一体それは何者だろう?」

ラシイヌは恭しく頭を下げ、

「宮内大臣閣下そんな詮議よりも、何時盗難にかかったか、いつ盗難を発見したか、何処で盗難にかかったか、それを承わりとうございます」