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あなんとじゅじゅつしのむすめ
阿難と呪術師の娘
岡本 かの子
「読売新聞」1928(昭和3)年5月6日~6月19日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,425 字 · 58 页
その三
そなたは飽まで木石の味方をされるゆえ、わたしは何処までも人情の味方をせずばなるまい。そなたと永劫離れぬ双生像に鋳られるなら、娘も嘸かし本望でござろう。
その三
(老女、毛綱を押し頂き懸命に呪文を唱える。阿難、体の竦み来るにつれ、極力反抗して手足をもがく様子。)
阿難 ――苦なる哉。苦なる哉。わたしは遂に妖術に縛られて生ながら青銅の像となる。この生恥はまだ堪えよう。出家の身として、衆生の眼へ逆に妄執の姿となって永劫に留まることの恐ろしさ。あわれなるわたしである。果報拙きわたしである。天晴れ仏果を得て人中の芬陀利華と咲くことを望んだ身が、畜生も蹄を避ける醜草と変るのだ。老女よ! 娘よ! お身等に若したった一雫の情があらば、どうか茲から私を逃がして呉れ、わたしにこの場を去らして呉れ。
(老女は用捨なく娘と阿難を一体にして毛綱で捲きにかかる。娘は反狂乱の態になり老女の前に立ち閉がる。)
娘 ――お母様! わたしは嬉しい。わたしは辛い。わたしはどうしたら宜いのでしょう。わたしは阿難様と一緒に縛られ度い。阿難さまを逃がしても上げ度い。おお、わたしのこの二つの心。お母さま、わたしはどうしたら宜いのでしょう。