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あなんとじゅじゅつしのむすめ
阿難と呪術師の娘
岡本 かの子
「読売新聞」1928(昭和3)年5月6日~6月19日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,425 字 · 58 页
その二
食を享くるもの、いやしくもこの理を忘るる勿れ。
(食事の進むと共に空は明けかけて来る。小鳥の声など聞え出す。食事が終る頃、すっかり朝の景に変る。明るくなって見ると、二列の僧座の一方は黒衣の男僧であって、一方は白衣の尼僧であるのが分る。)
その二
(食事を終った教団の人々は、めいめい食器を始末し、その辺を清潔に掃除し、威儀を正して左右に引退く。食物の残りを入れた壺ひとつだけ、内庭の中央に残し置く。しばらくは静けさの中に黎明が育まって行く。いつの間にか朝の小鳥、栗鼠、鳩、小猿などが壺に集まり来て、仲よく残りものを食べる。食べ終って去る。釈尊の居室の裡にて金鈴の音。東西僧堂にて頗る大きな鼓を鳴らす音。それを合図に教団の人々左右より出で来り、二列に内庭に立つ。再び金鈴の音ありて後居室の扉開く。正面に釈尊、定印を結び思惟の膝を組み居る。一同座具を延べて三拝する。左側、男僧の列の先頭に立つ舎利弗、進み出でて先ず恭しく問候する。)
舎利弗 ――世尊、御機嫌はよろしゅう御座いますか。お身体に何も御異状は御座いませんか。
釈尊 ――有難う、わしは別段に異常も無い。お前達は何うであるか。