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あなんとじゅじゅつしのむすめ

阿難と呪術師の娘

岡本 かの子

「読売新聞」1928(昭和3)年5月6日~6月19日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,425 字 · 58 页

青空文庫

そうそう、尼僧の取締りの曇弥さんも、あなたが大へん御精が出ると感心して居られました。この分なら、世尊より証道の御允可の出るのも、久しい先では無いと云って居られました。

摩登伽尼 ――証道の御許しのと、そんな至ったことはわたくしの分際でもなし、また望みでも御座いません。ただ毎日を娘の時より以上に、穢れなく送らして頂いて居るのが、わたくしの悦びなので御座います。それに……(言葉をいいかけて考えて居たが、思い切った表情にて)阿難さま。わたくしはこの頃になって、本当にあなたと結婚したということが分って参りました。

阿難 ――何と云わるる? (間)摩登伽尼。若し差し支えがなかったら、只今のあなたの言葉の内容に就いて、もう少しくわしく話して下さらぬか……実はかねがねあなたの心境の進みに就いて注意をするよう、わたしは世尊から命令を受けて居りました。

摩登伽尼 ――(合掌して)いつも乍ら、師の君の末徹った御慈愛。お礼の申しようも御座いません。それではわたくしの未熟な考えを其儘申し上げさせて頂きます。若しもあまりにお聞き苦しゅう御座いましたら、遠慮なく叱って頂き度いので御座います。