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かいだん
階段
海野 十三
「新青年」博文館、1930(昭和5)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,588 字 · 32 页
思わずその下に立ち寄って上を見上げてみると、螺旋階段はスクスクと伸びて三階にまで達している。その三階の天井は首の骨が痛くなるほど随分と高かった。なんとなく、「ジャックと豆の木」の物語に出て来る天空の鬼ヶ城にまでとどく豆蔓の化物のように思われた。螺旋階段の下には事務室へ通ずる入口の外にも一つ廊下に通ずる入口があった。螺旋階段を四宮理学士と二階へのぼると、ここもおなじような本棚ばかりの四壁と、読書机とがあり、入口はない代りに、天井が馬鹿に高くつまり二階の天井は元来ないので、三階の天井が二階の天井ともなり、随って三階はバルコニーのようにこの室の上に半分乗り出していて、それへ螺旋階段が続いていた。
「三階へも一度上ってみましょう」と四宮理学士が言った。
僕は自ら先登に立って、冷い螺旋階段の手すりに恐わ恐わ手をさしのべたときだった。急に頭の上にドタンバタンという激しい音がすると共に階段の上からネルソン辞典が四五冊、足許へ転がり落ちて来た。
「あら、あら、あら」
と甘ったるい声が天井から響くと、その急な階段を一人の女性がいと身軽にとぶように下りて来た。
「ミチ子嬢なのだナ!」