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かいだん
階段
海野 十三
「新青年」博文館、1930(昭和5)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,588 字 · 32 页
それには明らかに、所長殺害事件のあの時刻に佐和山女史の一種特別な跫音波形が印せられていたのであった。女史は、女理学士認定の蔭に所長となにか忌わしい関係を結んだものらしくその情痴の果に絞殺事件が発生したと伝えられる。四宮理学士の絞殺も同一手段で行われたのであったが、学士が女史の犯跡を握っていたので、已むを得ず殺害したものらしい。女史が僕にきかせた釦の話は、未だに解らないが、あの顕微音器のことを、マイクロフォンボタンというから、何かその辺のことをもじって事件の混乱を計画したものであろうと思われる。
友江田先生とミチ子との関係は異母の兄妹であることが判った。妹のミチ子はその父の変質をうけ継ぎ、小さい頃から自らすすんで曲馬団の中に買われて日本全国を漂泊していたのを、友江田先生がヤッとすかして連れもどり、タイピスト学校に入れたりしてやっと一人前の女にし、国研へ就業させたものであるが、決して兄妹とも知合であるとも他人に知られてはならないという約束であった。
だがこれを知ったのは、僕たち二人が友愛結婚をしてしまったあとの話である。
僕たち同士の変質は(それは亡くなった四宮理学士にはよく判っていたのだろう、恥かしいことだ)もう一日でも別れ別れになることは出来なくなっているのだ。