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ずいひつぜにがたへいじ

随筆銭形平次

江戸川 乱歩

19 探偵小説このごろ

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,733 字 · 10 页

青空文庫

本能のおもむくままにやってしまうという状態なんだ。想像力を盛んにすれば行為の結果について考えるから犯罪予防になると思うね。

江戸川 むかしはちょっとした手のこんだ犯罪があると、犯人は探偵小説の愛読者にしてしまったりしたものだね。ところであなたの奥さんは、あなたの作品を読んでいる?

野村 それがまたどうして女房というものはこんなにも亭主のものを読まないんだ、といつか話合ったことがあるんだが、うちの女房はまるで読まないね。もっとも子供は熱心な愛読者でね。女房というものは、亭主を一から十まで知りすぎているから、その書くものにも興味を持たんのじゃないかね。

江戸川 亭主が道楽をはじめると、こんどは読む。作品のどっかに現われていやしないかと隅から隅まで……

野村 道楽はしないね。およそ探偵作家というものは……(記者に向って)これは特筆大書してもらいたいな江戸川さんしかり、大下宇陀児君しかり。みんな女学校の校長にしてもいい人たちばかりだ。エロっぽい絵を描いた歌麿がガマガエルみたいな男だったそうで、男っぷりのいいのには色っぽい小説が書けないのと同然、奇々怪々な作品を書く人はみんな善良な男らしい。