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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
在线阅读吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 页
また、余一の扇の的でも、玉虫の話でも、さらに伊予引揚げの平軍三千騎が、なんの理由もなく、源氏に降伏したなどという伝承も、あの通りとは考えられないことである。そのため、屋島前後は、ほとんど、ぼくの創意をもって創作として書いた。しかし、古典よりは、ぼくの小説の方が、ずっと真実に近いものだと自分では信じている。
おととし一遊した大原の寂光院の小松智光尼から便りをいただいた。建礼門院のゆかりもあるせいか、ひどく身にひきつけて読まれているらしい。今年は安徳天皇の入水七百七十年祭にあたり、先ごろ下関の赤間宮で大祭があったとか。平家が長門の壇ノ浦で亡んだ後、女官たちが民間に落ちてさまざまな生き方をした風俗祭りといったような行事が今も続いているそうである。
「新・平家」もこの回で屋島が終わり、やがて壇ノ浦に移ってゆくが、しかし屋島以後の約一ヵ月間に、何があったか、歴史も古典も、その間は空白になっている。ぼくは自分の文芸的見地からその空白を埋める仕事に人知れぬ愉しみをいま抱いている。
白状すると(これも過日の大会でいったことだが)最初、この「新・平家」の構想は、壇ノ浦の平家敗戦直後を序編として書き出すつもりだったのである。