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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
在线阅读吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 页
がするのである。こんな嘆息を読者に訴えるのもへんだが、正直、自分でも書きえたと思っていない。さだめし読者も不満を覚えたことであったろうとおもう。
なるべく史実と、そして、肯定された範囲の古典に拠って、単なる空想小説に終わらないことを、最初から「新・平家」の基調の一つにもって来たので、つい自分の想像力も資料に制約されがちである。玉葉をはじめ、吉記、愚管抄、吾妻鏡、そのほかどうよせ集めてみても、寿永二年七月の平家西走前後の記事など、ほとんど大同小異で、四、五十行の小記事があるにすぎないし、新しい発見などはなしえない。もっともそれがあるくらいなら専門史家が一大論文を書くであろうし、とにかく、ひとくちにいえば、簡単極まる記事しかないのである。一社会事件程度にしか記録されてないのだ。むしろ他の宮廷行事や社寺参詣などの方がはるかに詳記されている。
――ついに来るものが来た、ぐらいな公卿の一般心理だったかもわからない。が、概して没落史は歴史上いつも至極かんたんに総決算されすぎている。大坂落城の次はすぐ徳川時代初期に入るといった形にである。平家のばあいのように、没落当夜を境として、流亡数年の末路までをテーマとしたものは、歴史としても文芸としても他に例がないといえよう。