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ずいひつ しほんたいへいき

随筆 私本太平記

吉川 英治

在线阅读吉川 英治《随筆 私本太平記(ずいひつ しほんたいへいき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,947 字 · 114 页

青空文庫

また江戸時代の小説類などおよそ“太平記”という書題を取ったものは百種以上にものぼるであろうか。たとえば「お伽太平記」「ごばん太平記」「女太平記」「東国太平記」「化物太平記」近年でも「新聞太平記」「何々太平記」など、とてもかぞえきれない。私のこんど書く「私本太平記」もその一つに入るわけである。けれど無数の書名は、じっさいには、ほんとの太平記の内容とは、何のかかわりもなく、ただその“太平”ということばの持つ広さや漠とした思わせぶりに仮托したものが大部分であるといってよい。

原典の「太平記」を書いた作者は、小島ノ法師円寂とされている。が、この人の伝記もよくわかっていない。書かれた時代は正平から応安年間(今から約六百年前)ごろだろうと考察されている。いずれにせよ、足利尊氏の死期をまたいだ頃だったらしい。しかし筆者の小島ノ法師は、当時でいう宮方(南朝方)の人であったから、その物語は多分に一方的であって、史料として信じるわけにいかない学説は古くからあった。けれどまた、北朝方の手に成った「梅松論」という一書もあり、これはむしろ足利尊氏方なので、二書をあわせ見れば、やや公平にちかい客観点に立てぬことはない。