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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

「そんな話犬もくわんそうよ兵六さん。それで男のあんたが出てきたわけでは、まさかないでしょう。」

すると兵六氏はちょっとあわてた口調で、

「まさか。わしも男ですからな。女ごときに負けやしませんがね。わしも男じゃ。そうそう馬鹿になってもおれん――」

わしも男じゃといいながらぽろっと涙をこぼしたことで、夏樹の目がまたくるくるしだした。安江はむつかしい顔になり、

「その話、あとにしましょうよ兵六さん。夏樹はあっちへいってらっしゃい。ここはおとなの話よ。」

「はあい。」

素直に立ちあがったと思うと、

「じゃあぼく、桃の花買ってくる。」

と、安江の鼻の先にかた手をつき出す。百円わたすと、

「それから、花あられも買う。」

「ああ、いいよ。」

「ついでにおもちゃもね。」

「なにいってんのよ。すぐつけあがる。」

すると何を思ったのか兵六氏も急に立ちあがり、

「夏樹さん、おじさんも一しょにいくよ。」

「…………」

夏樹ははかるようなまなざしで安江を見る。

「いいじゃありませんか兵六さん。来たばっかりなのに、少しゆっくりしたら?」

しかし兵六さんはあわてたかっこうでオーバーに手をとおしながら夏樹と一しょに出かけるしたくをした。