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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
焼き損じて口がゆがんでいるというのだが、ちょっと見には気がつかない。それを好きでもらって自分のにしたものだった。
「浜ちゃんの湯飲みも、きめなくちゃ。いつもお客さまのじゃあね。」
ふたりの意をむかえるようにいうと、同じように湯飲みを両手ではさんでもっていた安江は、目を湯飲みにそそいだまま、
「もう、いいんだよ。」
ぽつんという。静かだが荒い雲行だった。
「?」
判じかねている音枝に、安江は低い声で、
「浜ちゃん、きょうからお客さまなんだよ。どっか、住込みのところで、仕事さがしてもらうことにしたからね。」
「あら!」
「その方が、いいってことが、話しあいでわかったのさ。」
浜子が急に顔をおおって、泣きながら部屋を出ていった。
「音枝!」
浜子のあとを追って立ちかける娘をはげしく引きとめて、
「ほっときなさい。お前じゃないんだから。」
「…………」
「大丈夫だよ、浜ちゃんて子は。音枝なんかより、よっぽどしっかりしてるよ。」
「だって、かわいそうよ。」
「その、かわいそがられるのがいやだというんだから。」
浜子の泣声を聞きつけたらしく、二階の文吉が降りてきた。
「なんだ、一たい。