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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

「十九なことぐらいわかってますよ。でもね、五十のわたしより、とにかくはっきりしてるわ。そこへいくと音枝なんて赤ん坊よ。わたしだって赤ん坊扱いなんだから。赤ん坊はがまんができないものよ。わたしあした、あの子の母親に手紙かくわ。わたしの手にはおえませんし、わたしの目も届きかねますって。――どうしてわたしがこんな我慢をしなくちゃならないか、わからないもの。浜ちゃんだってそれをのぞんでるのよ。」

次第に興奮をまして涙までうかべる安江に、音枝はすがりつくようにして、

「おかあさん、おちついて、血圧があがるわ。ね、浜ちゃんも泣いてるのよ。今度だけ許してあげて。ね。ね。おねがいだから……」

眠れなかった安江は、朝方になって新聞をみだしてから眠気にさそわれ、ぐっすりねこんでしまった。目がさめるともう昼近くらしかった。出勤時間の自由な文吉までもう出かけたあとらしい。文吉の仕事はある小さな出版社が引受けている官庁の機関誌の編集だった。冬太郎も夏樹ももちろん学校である。ひっそりした家の中で、時計の音だけがする。浜子はどうしたろうとすぐそのことが頭にきた。ゆうべの言動が軽い悔いで思い出された。