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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

」

安江はじぶんの得手勝手をひそかに恥じながら、

「浜ちゃんわい?」

「職安へ、いったわ。」

「ええっ、もうかい。」

「だって、早くいかないと大変だってよ。進さんにたのんで、今日だけつれてってもらったわ。」

「ふうん。」

「神田橋ですってね。女専門の職安て。」

「ああ。音枝なんかも、少しいってみるといいよ。」

「わたしだっていきたかったわ。」

「行きゃいいのに。だれもかれも、みんないっちゃえばいい。」

顔を洗うと安江は食事もとらずに不きげんな顔でふらりと出かけた。花屋であろう。

白い菖蒲をもって安江はふらりふらりと森の道をわが家の方へ歩いていた。菖蒲はみな花が開いていて、花としての魅力に乏しい。花やのおかみはそれをただでくれたのだった。

――今、仕入れにいってましてね、夕方にはいろいろはいりますが――

小さな花やの店の中は、売れ残ってしぼみかけたカーネーションだの、ゆび先がちょっとふれてもくずれそうに開ききった芍薬だの、今安江のもっているような菖蒲だのと、もう商品にはならないものばかりが、新しい花のくるまでのつなぎの役で少しずつ残っていて、それがかえって店全体をだらしなく疲れはてて見せた。