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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

さきねるわ。」

「なんだ、そんならほっといて早く寝ればよかったのに。気がねしいったらほんとに。」

「だって、今のさきまで浜ちゃんがおしゃべりしてて、やめないんですもの。もうぐうぐうだけど。のんきな人。――浜ちゃん、もうお友だちができたんですってよ。」

声をひそめて音枝はいう。安江は思わずきつい目になり、

「男の?」

「女でしょう。だって職安の帰りに約束したっていうからさ。女子職安ですもの。――仕事が見つかったらその人と一しょに部屋かりるんですってよ。それまではここにいるって。そしてね……」

ガガー とけたたましいブザーに安江も音枝もとびあがった。夜なかにはベルは鳴らさぬきめにしてあるのに、酔っぱらうと文吉はすぐそれを忘れてしまう。

「いやなおとうさん、きっと赤い顔よ。」

すり足で玄関へ走ってゆく音枝のあとから安江も出ていった。案の定文吉は上きげんで、

「はい、おみやげ。」

と四角な包みを音枝にさし出す。

「またおとうさん、高いイチゴでしょう。」

「いいじゃないか。素直によろこべよ。」

どすんどすんとわざとらしく足音立てて安江の部屋へ歩いてゆく文吉のうしろで、音枝は、これもわざとらしく、