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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

夕食の時がきても夏樹はなかなかもどってこなかった。

「いいよ。こりさせた方が。」

近所中さがしまわったあとの音枝にむかって安江はいった。しかしいったあとで、大体お前がわるいんだよっ! と音枝にむかってどなりたかった。それをわざと押えて食卓についた。文吉も今日はおそがえりのはずだし、冬太郎は友だちの誕生日に招待されている。こうなると食卓は母と娘のふたりきりだ。めったにないことだった。夜勤の臨時事務員の口が見つかったとかで、浜子の帰りもここのところずっとおそい。もっそりと向きあってはしを動かしながら、安江は食べる気がしない。気をきかして安江のすきなひらめの煮つけや、いんげんのごまあえをつくってくれたことはわかっていたが、安江はまるですねてでもいるようにかんたんにはしをおき、小さな声で、しかしがまんできないというように、

「こっちは、人が眠っているときにもねないで働いているんだからね。――おとうさんだって、わずかのサラリーをもらうためにさ、自分の机の前にすわらずに、人に使われてるんじゃないか。石っころのような十円玉とちがうんだよ。」

「だって、おじさんたら――」