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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
『几帳面』と『ずぼら』だってさ。気に入っちゃったあ。」
そんな浜子の狂態をおぞましいものとしてながめる音枝の胸に思いがけない人の姿が浮んでいた。進君である。何のかかわりもないはずの進君に、音枝はあわて戸まどった。姉女房の母と父の年の差が、それと同じ年の差の進君に、いつ自分を結びつけて考えていたのか。音枝は赤くなり、やがてそのはじらいは一種の悲しみに変わっていた。浜子はいつのまにかねてしまい、文吉の二階の部屋も、安江の階下の部屋もしんとしている。電灯を消した音枝は、やみの中にしらがのふえた母の姿をえがき、その母が、あすはまたむっつりとして花屋にゆくであろうと思うと胸がうずいた。
五千円――と書いて、音枝はそれをごしごしと消した。その消してしまった秘密の中に浜子の顔が浮ぶ。今、病院のベッドの上で、どんな思いですごしているだろうか浜子……
いつかの夜以来、音枝は酔って帰る浜子を何度かむかえていた。いつもひとりだったことで、安江には知れずにすんではいたがそんな浜子に困惑を感じ、音枝はかたくいいわたした。
「ね、門のベルだけは押さないでね。」
そして昨夜である。