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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
心遠ければ
しかしその安心が浜子の救いにならないことを思うと、音枝は涙をためながら、
「わかったわ浜ちゃん、わたし、考えてみる、ね。」
泣きふしたまま、やがて浜子は安江たちの帰る前にねむってしまった。音枝はそれを、父にも母にも当分だまっていようと思い、浜子のために朝までねむらなかった。そして夏樹を学校へおくり出すと、だまって郵便局へゆき、スーツを作って残り少なくなった貯金の大部分をおろしてきて浜子にわたしながら、小声で、
「きょうすぐ、お医者へいきなさいね。ひとりで、いける?」
浜子は素直にうなずいて、ぽろっと涙をこぼした。
心遠ければ
このところ兵六さんはずっとひとりぼっちである。女房も娘も、兵六さんを残して次々と出ていってしまったのだ。その日二三子が小さなスーツ・ケースに身のまわりのものをつめているのをみて、兵六さんは気弱く聞いた。
「どこへいくんかね。」
しかし二三子はわざときこえぬふりで立ったりすわったりして、兵六さんには目もくれない。
「どこへいくんだ二三子、遊びにでもいくのかね。」
重ねて聞くと、二三子は物すごい剣幕で、
「遊びにだって、あきれた! おとうさんが出ていってくれないから、わたしが出ていくのよ。