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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
兵六さんの涙ぐんでのうったえに、隠居さんは隠居さんなりの感激のしかたで、単なる思いつきばかりでなく、すっかり同情をよせ、ほうき屋の伝票まで見せての身のいれ方だった。
「この仕入れのまんまであんたにわたしましょうや。二百円のものなら二百五十円から相手によっちゃ三百円位に売りつけるんだね。大体ほうき一本につき最小限度五十円から、上物なら百五十円ぐらいの利益をみるといいね。一日に三本売りゃああんた、ニコヨン以上にはなりまさあね。十本も売れた日にゃあ、すぐに長者だア。一つ、しっかりやってみるんだね。」
もとでもなしに、売れた時払いでよいという、めったにない好条件を出されては、兵六さんもおていさいどころでなくなった。草ぼうきをとりまぜて四本と、しゅろぼうき一本を一束にしてひもで結んで肩にかついだ。左の肩である。出かけるときに三河屋はいった。
「あんまり遠いところへいきなさんなよ鷲さん。ていさいや見えは、もうこの際捨てちゃうんだね。近いとこで、同情にうったえるのも戦術だよ。」
いつのまにかぞんざいな言葉になっていることにも気づかず、兵六さんはこの新しい商売を、三河屋から出発した。