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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

そしたら夫はいうだろう。

――なんでお前、はっきりことわれなかったんかね。いやなことは、みんなおれにいわせるつもりかね……

――ふとんがないのよ……

――そんならそうとはっきりいえばいいじゃないか……

ひとり問答しながら、安江は時計をみた。三時四十分だ。ベルを押すと音枝が小走りでやってきて、部屋にはいるなりうしろをしめた。けわしい顔をしている。

「どうしたの。兵六さん?」

「ううん。浜ちゃんなのよ。」

「なんだって?」

「おひまをいただきますって。」

「おひま? どういう意味かね。」

「わたしのような馬鹿はつとまりませんからってよ。――おかあさんが大きな声出すからよ。」

「じょうだんじゃないよ。つとまらないとか、おひまをいただくなんて、私は浜ちゃんを雇ったおぼえないよ。勝手に押しかけてきたんじゃないか。」

思わず声が高くなるのをしずめるように音枝はゆがんだ笑顔をつくり、

「とにかくね、ちょっときて。私じゃ手におえないの。」

「なんだっていうの。今更、ここを出ていってどうするつもりかね。じょうだんじゃない。」

「女ひとりぐらい、どうにでもなると思っているらしいの。」