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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
」
「あ、それ、宮川浜子でしょうか。」
思わず安江はからだをのり出していた。
「あら!」
目を見はった床次女医は、かいつまんだ事情を聞くとますますおどろいて、
「そうですか。私はまた、早がてんしてしまって。どうも、こういうそそっかしい女でしてね――」
ぴょこんと頭をさげながら、しかし安江の不安をうち消すように、
「あの娘さんなら、大丈夫だと思いますわ。偽名なんかしないでしょうよ。とにかく心当りを聞いてみてあげますわ。でも、とにかくはっきりした方でしたね。お宅の方とわかってればのみこんでましたのにね。お宅のこと、おっしゃらないんですもの――」
彼女はなれた手つきでかたわらの卓の上の受話器をとり、懇意らしい相手との話に、移っていった。
「――宮川浜子。十九なんですがね、もしかしたら二十歳といったかもしれないわ。いない。そう。じゃあまたね――」
結果を目だけで安江に告げながら、別のところへかけた。
「――あ、鹿島医院でらっしゃいますか。こちら床次でございます。ちょっとうかがいますが、お宅に宮川浜子って若い患者さん入院してませんでしょうか。は、入院だと思います。三か月か四か月ですから。