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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

」

「浜子ですよおじさん。いいかげんで、名前ぐらいおぼえてちょうだいよ。」

「あ、そうだったね。浜ちゃんっていったな。これはこれは、ようお越し。いろいろ気にしながら、ごぶさたしてね。どうもすまんこってす。えらい、待たしたんじゃなかったかいな。」

兵六さんはてっきり、例の夏樹の貯金のことで安江が浜子を使いによこしたのだと早がてんした。だから彼は浜子の前に手をつき、安江にあやまる丁重さで、

「何とも申しわけのないことをして、いいわけの言葉もありません。近いうちにはきっとお返しにゆける目鼻がつきましたからして、もうちょっと待ってくだされと、お安さんに、よろしくいってください。」

浜子はにやにやしながら、

「おじさん、わたしはそんな用事できたんじゃないのよ。おねがいがあってきたのよ。」

「そうかね。」

きょとんとしている兵六さんに、浜子はまじめな顔で、

「もう栗本さんへは、帰れないのよ。だまって出てきたんだもん。」

「何でまた。」

変転きわまりない事態に、まだ心の安定をとりもどしていない兵六さんに、浜子は更におっかけて、

「ゆっくりわけは話すけどさ、わたしをかくまってくれない。