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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

」

「すてきだね。お店どこ。」

「お店かあ、日本国中、いたるところだよ。――ところで夏樹ちゃん、浜ちゃんの荷物あるとこ、わかるかね。」

「うん。――ね兵六さん、パパン パンて鳴るピストルないの。」

夏樹にとっては浜子よりもピストルの方が重大な関心事だった。

お玉じゃくしやもち網などをまたビニールのふろ敷に包み直して、兵六さんは、

「さ、これはおねえちゃんへおみやげだ。わかったかい。兵六さんがね、お金もってきたけんど、お留守だからまたくるってね。そういってちょうだい。忘れずにね。そして浜ちゃんの荷物だ。どこにあるか、夏樹ちゃんにわかるかい。」

「知ってるさ。三畳だよ。――ね、おじちゃん、おもちゃ屋になったの、ほんとにほんと?」

「ほんとにほんとさ。うそだと思ったら門のところへきてごらん。おじちゃんの店があるよ。」

「へえ、じゃあぼくいく。パンパパンと鳴るピストルある。」

「あるよ。そいつもあげるからさ、さき、浜ちゃんの荷物出しておくれよ。」

「よしきた。」

夏樹は三畳の古だんすの上から、時代おくれの黒いかわのトランクを引きずりおろして、重たそうにさげてきた。たしかにそれは浜子がはじめてきた時チッキでおくってきたものだった。