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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
おなじみの雑貨屋がやってまいりました……
それがいえるまでに十日かかった。はじめの三日は兵六さんについてまわったのだ。じめじめしたところのないハイカラ雑貨屋さんは案外にうけて、浜子は大じまんだった。
「おじさん、私ひとりでもうれるわよ。おもしろいわね――」
一日か二日おきにかせぎに出るはじめの計画を、いつのまにか破って浜子は毎日出てゆくらしかった。そうなると兵六さんの方が案じてやらねばならない。
「気いつけんと、暑さにやられるぞ。」
すると浜子はかぶりをふり、
「大丈夫よ。身のほどを知ってますからね。」
「そうかね。」
「だって、遊んでいられる身分じゃないでしょう。お休みは雨の日だけときめたの。ニコヨンなみにね。」
「えらい、いきおいだね。」
「そうよ。身を捨ててこそ浮ぶ瀬もあれだわ。だって、お金がいることが、山のようにまってるんだもん。」
そんなことをいいながら、彼女はせっせと車に荷を積みこんだ。車は小さくても、だから人なみにほうきなどの大物は持てなかったが、大ていのものなら積みこんでいた。もってゆかないのはおもちゃの類だけだ。ぬいぐるみの人形やゴムマリならよいが、物騒な音を立てるピストルは好きでなかった。