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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

そして赤ん坊を畳の上にねかしておいてあらためてのあいさつだ。

「どうもどうも、無理なことをきいてくだすってありがとう。おふたりのお人柄に、今更感心してますの。」

見えすいたじょうず口をいう。じょうず口と知りながら安江は太刀打ちできない不きげんにだまっていた。こんなことが有り得ることだろうかと気がついたときにはもう兵六さん夫婦は帰っていったあとだった。赤ん坊とおしめのふろ敷とミルクの大きな缶が場所をとっている。赤ん坊は眠っていた。

「どうしてこんな早くきたの。」

「近くでまたしてあったんだそうだ。」

「へえ、いよいよおしつけね。相談なんかじゃありゃしない。相見互いなんかじゃないわよ。」

「不愉快だね。実に。」

「はじめっから、わかっていたわよ。だからいわんこっちゃない。」

「あのとき、お前が逃げたからだよ。」

「あのときって、どのときさ。」

「茶を買いにいくって――」

「逃げやしないわ。ほんとに茶を買ってきたじゃないの。その間にぺろっとなめられてんだもの。」

「まあいいさ。一と月かっきりでもどしにいくよ。それまでは、とにかく責任もとう。」

「あなたがね。」

「ああおれだよ。