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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
」
抱いてやるとおかっぱの髪のふさふさとした音枝はもうひざにあまった。一つ身の着物は肩あげをとってもつんつるてんだった。その姿から安江はふと幼い日の小萩のことを思い出した。一番年も近く、けんかもしたが、仲もよかった妹であった。大きくなってからもよく気があい、安江たちの結婚についてかげの力になってくれたのも彼女だった。小さい時からからだが弱く、そんなことから縁も遠くて、やっと一昨年結婚したばかりだった。子供などできまいと決めていたのが去年の暮れ男の子にめぐまれ、それに先だって文吉に名付けをたのんできた。文吉も喜んで考えたあげく、真冬に生れるのだからとて冬太郎とつけ、トウとよました。
夜汽車はこんでいた。家を出たあとへ死の知らせがあったとも知らず、安江はひとり汽車ののろさをもどかしがっていた。せめて一目なりと、生きている小萩にあいたいと思ったのだ。スチームのむれるような暖さにもかかわらず、彼女はショールで顔をかくし、三宮につくまで思い出しては泣いていた。駅へはたれも迎えに出ていなかった。文吉が電報を忘れたのだろうと思いながら、すぐ人力車にのった。加納町は一走りである。