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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
また音枝が先にのりまわした。そしてけんかである。
「自転車がいいんだア。自転車ア。」
すると安江が冬太郎をしかりつける。
「自転車はおねえちゃんの。冬坊のは三輪車です。」
やあい、と音枝がはやすと冬太郎はむしゃぶりついてゆこうとする。頭ばかりでかくてからだの小さい冬太郎はすぐころぶし、きゃしゃで身軽な音枝の逃げ足は早い。
「やあい、冬坊トがつくとん十郎。とろろんのとりぶくろで、とったかとったか。」
なぶられると冬太郎はくやしがって安江に泣いてうったえる。
「おねえちゃんがなぶったア。」
しかし安江は音枝がしかれない。いわば三輪車も四輪車も冬太郎のものなのだ。安江はそれがいいたくない。
「おねえちゃんはね、大きいからいまにあの自転車にのれなくなるよ。そしたら三輪車も四輪車も、冬坊のものだがね。」
冬太郎はにこにこして言いかえしにゆく。
「おねえちゃんなんか、いまにのれなくなるよーだ。そしたら三輪車も四輪車も、冬坊のだよーだ。」
すると音枝はいい気になっていいかえす。
「そしたら今に、神戸のおじちゃんがほんとの自転車おくってくれますよーだ。」
冬太郎はまた泣き顔になってうったえにもどる。