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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
そんなこととも気づかぬらしい音枝は、
「じゃあ配給はじめます。ちょうど割りきれるのよ。ハイおとうさん、ハイおかあさん、こっちはわたしと冬太郎。ハイおとうさん、ハイおかあさん、こっちはわたしと冬太郎。」
と、自分たちのは自分のひざにおいた。配られたのは軍手と軍足のかた方ずつだ。
「なんだ、こりぁ。」
文吉が笑いながら軍手のかた方をつまみあげるのへ、
「軍手ですよ。だって二足ずつもらったでしょ。四人じゃかたっぽずつしか当らないわよ。だから私たち相談の結果交換したの。冬太郎は軍足なの。私は軍手。おとうさんだって、おかあさんと交換すればいい。ただね、あとが問題なのよ。これ!」
と、かた手にもってさし示したのは外国タバコだった。箱の表の赤い丸が輝いてみえた。
「なんだ、やっぱりタバコじゃないか。」
音枝は目の色かえる文吉からいち早くうしろにかくし、
「ね、私と冬太郎の当り分のタバコ、とりかえてくれないおとうさん。指一本とタバコ一本とよ。だけど私は軍足よりか、おとうさんの大事な毛のくつしたの方をにらんでるのよ。冬太郎はね、軍足でいいんだって。私が毛のくつしたをもらうことによって、おかあさんに軍手が一組当る勘定になるのよ。