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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

」

「だって、あの晩、お前相当うれしがっててさ、兵六さんに好意的だったもの。」

「そりゃあ、あの日はそうだったわよ。でもそれは、わたしだけじゃなかったわ。」

「困ったね、ほんとに。あんなもので釣りにきたんだよ。いつだって、見くびってるんだから。」

まだ花などなかった時なので、安江はぷりぷりして当り場に困った。

不幸はくりかえすといわれるが、不幸とはいえなくても、同じひとりの人間の生涯に同じようなことは、ふしぎとくりかえすものらしい。安江の家に夏樹という赤ん坊がやってきたのは斎木少年がきて一か月目ぐらいの時である。戦時中に安江たちが仲人で結婚した若いふうふが、ふたりとも肺病で寝こんでいるのを見かねて、あずかった子供だった。ひやけなすびのようにしぼんだ、あおい顔の赤ん坊は、たれの目にも末ながくそだつとは思えなかった。安江たちにしろ、そんなことよりも、目の前の、足下の、たった今の、その問題を解決するようなつもりで、連れて帰ったのである。万一の場合、若い両親にかわって最後のみとりをしてやろうと、口には出さぬが、ひそかな思いはそこにあったのだ。やむを得ず居すわりの形になった斎木少年に留守をたのんで、その日音枝とふたりで赤ん坊をつれにいった安江が、三人になって帰宅すると、思いがけない兵六さんがきて、待っていた。