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ざつぶんてきざつぶん
雑文的雑文
伊丹 万作
「中央公論」1934(昭和9)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,835 字 · 18 页
その淘汰はまつたく行われていない。
口をきくということはおしでないかぎりだれにもできることであるが、商売として口をきくことになると案外難しいものである。早い話が不愉快な音声は困る。発音不明瞭は困る。小唄の一つも歌つて調子はずれは困る。というふうにいつてくると、もうそれだけで落第者続出の盛況である。
舞台のほうでは普通に口がきけるようになるには五年以上かかるものとされている。普通にというがこの普通が大変で、三階の客にも聞えることを意味しているのだからなかなか普通の普通ではない。経験のないものは大きな声さえ出せば聞えるだろうと考えるがそんなものではない。声が大きいということと、言葉が明瞭に聞き取れるということは必ずしも両立しない。死んだ松助などは家にいるときもあのとおりであろうと想像されるような発声のしかたであつたが劇場の隅々までよくとおつた。何十年の習練の結果が、彼に発声法の真髄を会得せしめたのであろう。
トーキーの発声の場合は舞台と違つて距離に打ちかつ努力を必要としないからそれだけ容易なわけである。どんな低いささやきも機械が適宜に拡大して観客の耳にまで持つて行つてくれるのだから世話はない。