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ざっとう
雑沓
宮本 百合子
「中央公論」1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,832 字 · 50 页
「お嬢さんもかえって来たし、きょうはこのくらいにしとこうよ。包みは一応戸棚へでも入れておくんだね」
開けた障子のところへ楽な姿勢で、よっかかり、その様子を眺めていた宏子の活々して、感受性の鋭さのあらわれている眼の中に、あったかい、だが極めて揶揄的な光が輝いた。彼女は、柔かい髪をさっぱりと苅りあげている首を、スウェータアの中でわざと大きく合点、合点させながら云った。
「そう、そう。そして、十日もたったら、又同じ包みをもち出して、ひろげて、日に当てて、あっちのものをこっちへ入れて、しばって戸棚へつんでおきなさい。包みは減りっこないし、きりもないし、大変いい」
「早速そうだ!」
「だってさ」
「もう、いいったら!」
瑛子も、その図星に思わず自分からにやにやしながら、若やいだ顔つきをして娘を睨んだ。流行からはずれているにかかわらず、瑛子はたっぷり前髪をふくらがした束髪に結っているのであったが、その結いかたは、特別な派手な似合わしさで彼女の面長に豊富な顔立ちを引立てている。くつろいで機嫌よくしている母を、宏子は美しいと思って心持よく眺めた。大抵毎週土曜から日曜にかけて、宏子は語学専門の塾の寄宿から、うちへ帰って来た。