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ざっとう
雑沓
宮本 百合子
「中央公論」1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,832 字 · 50 页
はる子は、歩いている足はゆるめず黒地に赤をあしらったハンドバッグをあけ、小さく半紙にくるんだ金を出して、重吉に渡した。
「mの方は、まだあんまり大衆的に行かなかったんだけれど。――誌代はちゃんとあります」
腕の大きい動かしかたで重吉は左手で帽子を深くかぶり直すようにしながら、黙ってその金包みをズボンのポケットに入れた。
「――この前のとき、配布の助手を見つけることになっていたが、どうなった?」
「一人はあるんです」
「メンバアかい?」
「ええ、割かた近ごろ入って来たひと。同級なんです。市内にうちのあるひとがいいんだけれど、私たちんとこ、通学のひとは比較的むずかしいんです。きっと、学校とうちと生活が別々で、うちへ帰ると家庭の気分にまぎらされちゃうのね。大体云うと、私なんだか東京で生れて、ずっと学校も東京でやって来た学生って、あんまりがっちりしてないみたいな気がするんだけれど」
「…………」
重吉は濃い眉と睫毛とを一緒くたにして一寸しばたたくようにして考えながら、黙って歩いていたが、はる子の云ったことには直接戻らず、
「新しく見つけたのは、どういうのかね、通学?」