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ざっとう
雑沓
宮本 百合子
「中央公論」1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,832 字 · 50 页
気まずい思いがひろがって、宏子も順二郎も黙り込んだ。お盆をもってお給仕がそこに坐っている。宏子は気がついて、
「もういいわ」
と云った。瑛子の気質の激しさは、いつもこういう形で爆発するのであった。食事を終って、横の腰かけに移った泰造に、なおも言葉で追いすがるように瑛子が云った。
「あなたって方は卑怯ですよ」
「――大変なことになったもんだね」
それは、やっと怒鳴るのを我慢している苦々しげな笑いで云った。
「俺は、自分ぐらい模範的な良人はないと思ってるがね」
「そこが卑怯だって云うんです――あなたはひとが来ていると、いつもそうだ」
「ひとって――ひとなんか別にいやしないじゃないか」
「宏子だっているじゃありませんか」
父親と向い合うところに腰かけていた宏子は思わずその言葉に頭をあげた。そして、父を見た。
「自分の娘を、ひとっていう奴があるもんか。とにかく、あした勧銀へ行きますよ、そうすりゃ何も云うことはないだろう」
「あなたは、自分のかたをもつものがいるときは、いつもそうやってごまかそうとなさる。私はそういうところがいやなんです」
宏子は、少し蒼ざめた顔をして瑛子を見、云った。