轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ざっきちょうより(に)
雑記帳より(Ⅱ)
寺田 寅彦
「文学」1934(昭和9)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,473 字 · 9 页
そんなことを考えながら帝劇の玄関を下りて、雨のない六月晴の堀端の薫風に吹かれたのであった。
八
随筆は誰でも書けるが小説はなかなか誰にでも書けないとある有名な小説家が何かに書いていたが全くその通りだと思う。随筆は何でも本当のことを書けばよいのであるが、小説は嘘を書いてそうしてさも本当らしく読ませなければならないからである。尤も、本当に本当のことを云うのも実はそう易しくはないと思われるが、それでも本当に本当らしい嘘を云うことの六かしさに比べれば何でもないと思われる。実際、嘘を云って、そうして辻褄の合わなくなることを完全に無くするにはほとんど超人的な智恵の持主であることが必要と思われるからである。
真実を記述するといっても、とにかく主観的の真実を書きさえすれば少なくも一つの随筆にはなる。客観的にはどんな間違ったことを書き連ねていても、その人がそういうことを信じているという事実が読者には面白い場合があり得るからである。しかし本来はやはり客観的の真実の何かしら多少でも目新しい一つの相を提供しなければ随筆という読物としての存在理由は稀薄になる、そうだとすると随筆なら誰でも書けるとも限らないかもしれない。