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おしゃく

雛妓

岡本 かの子

「日本評論」1939(昭和14)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,482 字 · 53 页

青空文庫

そしてやっと逸作の言葉でわたくしのその疑いは助け出された。

「まあ、ほんとに」

わたくしの気持は茲でちょっと呆れ返り、何故か一度、悄気返りさえしているうちに、もうわたくしの小さい同姓に対する慈しみはぐんぐん雛妓に浸み向って行った。わたくしは雛妓に言った。

「かの子さん。今夜は、もう何のお勤めもしなくていいのよ。ただ、遊んで行けばいいのよ」

先程からわたくしたち二人の話の遣り取りを眼を大きく見開いてピンポンの球の行き交いのように注意していた雛妓は「あら」と言って、逸作の側を離れて立上り、今度はわたくしの傍へ来て、手早くお叩儀をした。

「知ってますわ。かの子夫人でいらっしゃるんでしょう。歌のお上手な」

そして、世間に自分と同名な名流歌人がいることをお座敷でも聴かされたことがあったし、雑誌の口絵で見たことがあると言った。

「一度お目にかかり度いと思ってたのに、お目にかかれて」

ここで今までの雛妓らしい所作から離れてまるで生娘のように技巧を取り払った顔付になり、わたくしを長谷の観音のように恭々しげに高く見上げた。

「想像よりは少し肥っていらっしゃるのね」

わたくしは笑いながら、