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あめとこども
雨と子供
宮本 百合子
「読売新聞」1926(大正15)年9月22~24日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,204 字 · 7 页
部屋の中で座布団をぶつけ合って騒ぐ。或はもう少しおとなしい子供らしく静かに電車ごっこでもする。遊びはいつもの遊びなのだが何だか部屋の隅々が暗く、物の陰翳が深く、様子が違う。その何だか違う感じが小さい子の感情を限りなく魅する。ちょっぴりこわいようでもある。珍しいものはいつだって少しはこわいところもある。――それを子供はよく知っている。その感じを更に強め享楽するために、私は机だの小屏風だのを持ち出して、薄暗い隅に一層暗い囲いを拵えた。すっかり囲って狭い一方だけが開いている。そこが洞の出入口だ。私は一人の母で小さい息子とそこに隠れている。何から?――シッ! そんな大きい声を出してはいけない、この山には虎がいるのだ。虎がきくではないか。ほら、もう唸り声がする。洞のつい入口まで来た。ウオー、ウオー、美味そうな子を入口の幅が狭いため食えないのを怒って彼は盛に唸りつつ嗅ぎ廻る。私は段々本気になり、抱いている子に「大丈夫よ、大丈夫よ」と囁く。太ったもう一人の弟は被った羽織の下で四足で這いながら自分が本当の虎になったような威力に快く酔う。
そんなことをして遊ぶ部屋の端が、一畳板敷になっていた。