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あめ
雨
織田 作之助
「海風 第四巻二号」1938(昭和13)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,421 字 · 60 页
それで鉄拳制裁をうけ、そしてそのことが教師に知れて諭旨退学を命ぜられた。
お君は何とも言わなかったが、安二郎は彼を嘲笑した。お兼は執拗にのゝしった。娘をくれたろうと思てたのに、ほんまに愛想がつきてしまった、碌でなしの不良といわれて豹一の眼は光った。一週間後に、もう夕陽丘女学校の四年生になっていた鼻の頭の赤いお兼の長女が豹一に乱暴な接吻をされて、十日余り、ぽうとした気持になっていた。
お君の眼のまわりに皺が目立って来た。それをみると、豹一の心は痛んだ。退学処分になったばかりに母親の肩身が急にせまくなったと思うのである。そう思うと、女工の様に働かされてばかりいるお君の姿が改めて痛々しく見直されて来るのだった。安二郎は既に一万円近くの金を貯めた、馴染の女郎を身請けしてかこってしまうと、彼の放蕩は急に昇格して芸者遊びになり、そしてハイカラ振ってその頃道頓堀に出来た大阪名物カフェ美人座にもしげ/\と通った。家で泊ることも少く、そんな彼を見て、近頃雇われて来た森田は、御寮さんもお気の毒や、それじゃ何ですな夫婦関係もときわどい話まで持ち出してお君に同情した。お君はたゞ、男なんて仕様がありまへんなと笑うだけであったが、その笑いにどこか力の抜けたものがあると思った豹一は、不平一ついわないお君の心にまで立入って考え、何か自分