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あめ

雨

織田 作之助

「海風 第四巻二号」1938(昭和13)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,421 字 · 60 页

青空文庫

刺青のたあやんが窃盗罪で警察の手に捕えられ、その事件に関聯した故買の嫌疑であった。盗んだ品と知って買ったか知らずに買ったかと調べられた訳だが、さあ怪しいとは思ていましたがといったお君の言葉がひっかゝったのである。罰金やと安二郎は苦り切ってお君の答弁振りをのゝしったが、豹一はふと、故買の嫌疑ならお君よりむしろ安二郎に掛かるのが当然であったと疑い、調べてみると古物商の届けはお君の名儀になっていたのだった。豹一は、それに何か安二郎のからくりがあると安二郎に喰って掛った。母親が身代りに留置されたのだという豹一の言い分に、安二郎は、生意気いうな、俺が警察に行くのもお君が行くのも同じや、夫婦は一心同体や。そうですか、じゃあもっと夫婦らしくと豹一が言い出すと、俺に文句あるなら出て行け。

母親も一緒にと思ったが、豹一は、一人で家を飛び出してしまった。出て行きしな、自分の力で養えるようになったらきっと母を連れに来ますと雇人の森田に後のことを頼んだ。森田の度を過ぎた母への同情振りはかね/″\苦々しかったが、さすがにその時はくれ/″\も頼みますと頭を下げた。便所でポロ/\と涙をこぼし、そして涙を拭きとると、泣いて止めるお君を振り切って家を飛び出し、その足で職業紹介所に行った。