轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ゆきとどろ

雪と泥

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋、1954(昭和29)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,993 字 · 40 页

青空文庫

「同じことじゃないか」

「そのお盃をちょうだい」おしのは折之助の片手を抱いたままそう云った、「あたし酔わなければ、もっと酔わなければ、とても苦しくって」

「だから云ってしまえばいいんだ」

「口では云えないんです」

おしのの声は怒ったように聞えた。折之助はどきっとして顔を見た。すると、おしのは盃を呷って膳の上へ置いた。乱暴な動作だったので、それは畳のほうへ落ちて転げたが、おしのは構わずに立ちあがった。

「どうするんです」

折之助はそう云いながら、手を伸ばして支えようとした。おしのは袂を振り、大丈夫ですと云いながら、廊下へ出ていった。少しよろめいたけれども、足はしっかりしてみえた。折之助は太息をついた。あけたままの障子の間から、暗く黄昏れた中庭が見える。どれが山茶花かわからない、いつか花の咲いているのを見た記憶はあるが、そのあたりをぼんやり眺めながら、折之助はにわかに深い酔いを感じた。――やや暫くして、彼は手洗いに立った。そっちにおしのがいるかと思ったのだが、その辺にいるようすはなかったし、戻って来ても座敷はからであった。

「どうしたんだ」と彼は呟いた、「――まさか帰ったのではないだろうが」