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ゆきとどろ
雪と泥
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋、1954(昭和29)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,993 字 · 40 页
「悪いのは私だよ」と彼も声をひそめた、「泣かないでおくれ、頼むから、――あやまらなければならないのは私のほうだよ」
「いいえあたし悪い女です、あなたはなにも御存じがないんです、あなたとこんなことになってしまって、あたしとても、生きてはいられませんわ」
「なぜそんなことを云うんだ、二人は必ず結婚できるんだよ、私を信じておくれ、私はきっとうまくやってみせるよ」
「堪忍してちょうだい」おしのは叫ぶように云って、夜具の中でぶるぶると震えた、「あたし嘘を云ったんです、あなたを騙したんです、だから生きてはいられないんです」
折之助にはわけがわからなかった。
「ばかなことを云うもんじゃない、おしのはなにも騙したりなんかしやしないよ」
「済みません、堪忍して」
おしのははね起き、折之助の膝にかじりついて、激しく泣きながら身悶えをした。
「あたし美濃庄の娘なんかじゃない」とおしのは喘ぐように云った、「どこの娘でもない、あなたなんかの知らない、穢れた、卑しい、悪い女なんです」
「はっきりお云い、それはどういうことなんだ」
「あたしあなたを騙しました、初めから騙していたんです」とおしのは云った、「あたしのうしろには悪い親方がいます、あたしは病気のおっ母さんと、三人の弟や妹を養うために、その親方に身を売ったんです、親方はあたしを使って、こんな