轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ゆきのうえのあしあと
雪の上の足跡
堀 辰雄
「新潮」1946(昭和21)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,685 字 · 12 页
だから、つまらないことまで、妙に生き生きとして感ぜられて来ることもある。僕がはじめてこの村に来た当時のことだが、或日、昔の屋敷跡らしい大きな石崖のうえに立って、秋らしい日ざしを浴びながら、病みあがりらしくぼんやり蓼科山の方をながめていた。その晩、宿の主人がいうのに、そのときそうやって石崖のうえに立っていた僕の姿を遠くから見かけて、ふと子供のときに見た一匹の傷ついた鹿のことを思い出したそうだ。なんでも霜のひどく下りた朝のことで、山のほうから追われて来たらしいその鹿は、丁度その石崖のところまで来ると、ちょいと背後をふりむいてから、其処をすうっと跳びおりて、下の畠のなかを湯川のほうへ一散に逃げていった。そうしてその畠の真白な霜の上には、その鹿の傷ついた足の血が鮮やかに残っていたという話だ。……そんなことをきいてから、その石崖にかぎらず、この村のあちこちに残っている石崖のひとつひとつが、僕にはなんとなく意味ありげに思われて来てならなかった。まあ、そういった鹿の跳び越えていった石垣だとか、秋になると蔦かずらが真紅になったまま捲きついている、何か悽惨な感じの、遊女らしい小さな墓だとか、――そういうものなら、そのほかにも、まだまだ何かありそうだね、これという話らしい話がそれに伴っていなくとも。