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ゆきのひ
雪の日
近松 秋江
「趣味」1910(明治43)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,365 字 · 17 页
と言っていたんでしょう。それが、ああして兄さんの神さんといっしょに私のすぐ傍を通りながら黙って行くなんてことがあるものか。人を三年も四年も苦労をさしておきながら、……と思って、姉にどうだった? 私を見たようであった? と聞くと、『姉は、ああ知っていたようであったよ。二人でお前の方を見い見い何かひそひそ話しながら行ったから』と言うし、私は悔しくって悔しくってじっと向の方に行くのをいつまでも見送っている。と、よほど行ってから二人で私の方を振返ってみていました。
「私はそれから気分が変になって、すぐ近処の姉の家に寄って――姉が餅菓子か何か買って行って茶を入れたりなどしたけれど――私は茶も菓子も欲しくない。少し心持が悪いからと言うと、姉もそれを察して、『じゃ少し横になって休んだらいいだろう』と言って枕を出したりなどしてくれました」
「フム、それからどうした?」私も何だか古い焼疵を触られるような心持がして、少し呼吸が詰るようになった。
「ナニ、それからどうということはない。少し休んでいるとだんだん落着いてきたから『も少し休んで行ったらいいだろう』と姉が言うのを、ナニもういいよと言って自家に戻ってきたけれど、私その日、一日あなたは留守だし、お母さんに、私今日少し心持が悪いから寝るよと言って寝ました。